ピグマリオン効果の実験のより詳しい内容
先生が生徒のことを「この子は成績が伸びる」と思っていたら、その子の成績が本当に伸びてしまったというピグマリオン効果。
ここでは、この効果を示した実験について、すこし詳しくみていきましょう。
ピグマリオン効果がみられた条件、なかった条件
ピグマリオン効果は、実験した博士の名前から「ローゼンタール効果」とも呼ばれます。そしてこの実験の結果がどうなったのかといえば、いくつかの条件で効果のあった場合と、あまりなかった場合とがありました。
その条件をよくよく見ていくと、ふむふむと思わせてくれるものがあります。
当時のアメリカの小学校の1クラスは25人~35人程度で、日本よりはやや少なめですね。そして9月に新学年が始まり、5月ごろにその学年が終了するので、学年初めの9月に担任の教師にこっそり伝え、学年終了の5月ごろの知能検査で結果を判定したようでした。
成績が急激に上がると先生に伝えた生徒の数は、約20%とのことなので、一人の先生におおよそ5~6人程度を教えたのでしょうね。
さて、そうした中でこのピグマリオン効果があった場合とあまりなかった場合との比較をしてみましょう。
効果あり条件:小学校1、2年生の低学年
効果なし条件:高学年、特に6年生には効果が薄かった
効果あり条件:新学期が始まって2週間以内に先生に伝えた
効果なし条件:新学期が始まって2週間を過ぎた後で先生に伝えても、ほとんど効果なし
効果あり条件:先生が事前に生徒のことを知らなかった
効果なし条件:先生が事前に生徒のことをよく知っていた時は、あまり効果なし
「効果なし」とはいっても、本当に効果がなかったのではなく、たいていは効果が薄かったというだけで、少しは効果があったようです。
実験にあたっては、ローゼンタール博士は事前に先生にインタビューをして、前の学年から継続して担任となっているかどうかとか、生徒に対してどんな印象を持っているか、などで確認をしていたそうです。どうやら事前に生徒に対して先入観念があると感じられた先生は、調査対象にはしなかったようでした。
このことからわかる驚きの事実!
このピグマリオン効果の実験で、効果のあった条件と効果のなかった条件とをよく比較してみましょう。
★小学校1年生や2年生の低学年には効果があった
:小学校の低学年の方が先生の期待を素直に受けやすい、ということが挙げられます。
しかし同時に、先生がまだ生徒のことをよく知らない状態でもありますね。特に1年生に関してはほぼ先入観念のない状態でしょうし、2年生にしてもよくわかっていない状態だと思います。
:低学年の場合は、一人の先生がすべての科目を一人で1学年間教えるのが通常。つまり、1学年間一人の先生がずっと同じ生徒たちと向き合っています。
:高学年になるとクラス替えがあったり、授業科目ごとに先生が替わることも出てきます。なにより、その生徒のことを先生も他の生徒たちもよく知っている可能性が高く、いまさら「この生徒は成績が伸びる」と言われても…、という状態でしょう。
★新学期が始まって2週間以内に先生に伝えた場合に効果があった
:先生も人間ですから、ある程度生徒のことを知ってしまうと、後に「実はこの生徒は…」などと言われても素直には信じられないでしょうね。
その点、新学期が始まって2週間以内だとまだ生徒のことをよく知らないので、素直に信じやすかったのでしょう。もっとも、楽器が始まる前、つまり先生がまだ生徒に会っていない段階で「この生徒は成績が伸びる」と伝えた場合は、効果がなかったという話を聞いた気がします。顔もみないうちにこの子は頭がいいなんて言われても、ピンとこなかったのでしょうね。
★先生が事前に生徒のことを知らなかった
:これは直接的ですね。先生が事前に生徒のことをよく知ってしまうと、「この子は将来成績が急激に伸びます」と言われても、きっと信じかねたと思います。先生が生徒のことをよく知らない段階で言われたからこそ、先生もローゼンタール博士の言葉を素直に信じることができたのでしょう。
こうした事実を考えると、どうやら子どもたちがどうこうと言うより、先生がどれだけ生徒のことを信じ込めるかが本当のキーポイントだ、と言えますね。
先生が本気で信じた
⇒子供の成績が本当に伸びた
という事実がハッキリと見えてきてしまいますね。
いままでは、「話としては面白いね」ぐらいに感じていたことが、「もはや間違いのない事実だ」と感じ始めてしまうことでしょう。
自己効力感ってなんだ
また、この実験で効果のあった条件というのがまだあるのです。その条件とは
★自己効力感のなかった子どもに効果があった
ということも言われていたんですね。
「自己効力感」、これは
《オレは何だってできるんだぞ》
という感覚のことですね。つまり、もともと何にでも自信のあった子どもにはあまり効果がなくて、いつも
《オレは何をやってもダメだ》
と思っていた子にはとても効果があったということでした。
この事実、なんかとても気になりますね。
たしかに、《オレは何をやってもダメだ》と感じてしまったら、ちょっと難しいことでもすぐあきらめてしまいそうですが、《できるかもしれない》と感じたら、少しぐらい難しいことでも「やってやろう!」という気になりそうです。
もしかしたら先生に教えてもらっているうちに、「自分にもできるかもしれない」という気持ちになってしまうのかもしれませんね。
ピグマリオン効果の疑問と不思議はどこまでも続きます
もし先生が生徒のことを「これが優秀な生徒だ」と思って接すると、生徒の方もなんとなく「もしかして、オレって何でもできるのかな?」と思い始めるなら、たぶんいろんなことに挑戦をしてみたいと思うことでしょうね。そのうち一つでもうまくいったら、「本当だ、オレって頭がいいんだ!」と感じ、勉強も楽しくなり、結果学業成績が伸びたとしても、不思議はありませんね。
この、「自己効力感」、英語ではセルフエフィカシーというようですが、ピグマリオン効果で効果の理由がこの自己効力感の上昇にあるとしたら、とても納得してしまいます。すぐに成績が向上することはなくても、勉強が楽しくなったら、やがては成績も伸びるでしょうね。
そして、もともと勉強が楽しく、自己効力感の高かった生徒にはあまり効果がなかった、ということも納得の事実です。
でも、どうして先生が
この子は頭がいい
という思うことによって、生徒が
やればできるんだ!
とどうして思うのでしょう。言葉などでは何も伝えてはいませんよね。

もしかしたら、これはピグマリオン効果というだけではなく、誰かの思いが誰かに伝わるという仕組みが人の心にあるのではないか?
いや、人以外の動物の心にもこの仕組みはあるのではないか、もしかしたら太古の昔から、集団を構成する動物たちにはこうした意思伝達の仕組みがあって、その心の仕組みが今に進化してきたのではないか、そんな思いでピグマリオン効果を調べています。
その前に、「進化」と「心」の前提条件です
ところで、
進化ってこういうことですよね。
簡単に言えば「子孫が残り繁栄すること」
心ってこういうことですよね。
「本能」と「学習」と「思考」と「習慣」と「感情」
※このブログは「70過ぎてのお勉強」シリーズの一環です。
※正確な事実はご自身の責任でお調べください。内容をうのみにしないでください。
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