DNAに刻まれた仕組み ― “意図”のように見える行動(研究レポート77)
この記事でわかること
生命の最小単位である単細胞生物の行動を手がかりに、「心の原点」がどこから生まれたのかを考えます。DNAの働きと私たちの感情の関係を探るヒントになります。
単細胞でも行動を選んでいる?
ゾウリムシやアメーバのような単細胞生物は、顕微鏡で見るとただ漂っているように思えます。
しかし観察すると、彼らは環境に応じて動きを変えるのです。栄養のある方向に進み、強い光や有害物質からは遠ざかる。こうした反応はDNAに刻まれた仕組みであり、生命の基本的な行動原理といえます。
まるで“意図”があるように見える
もちろん単細胞生物に意識や心はありません。
それでも「快を求め、苦を避ける」という行動は、人間の感情に通じるパターンを示しています。
例えばアメーバは、弱い電流を流すと進む方向を変えることが知られています。これは危険を回避するような反応であり、外から見ると“意図を持って逃げた”ようにすら見えます。
京都大学の研究チームは、ゾウリムシが餌となるバクテリアの存在を化学物質で感知し、効率よく集まる様子を報告しています。DNAに書かれたプログラムが、まるで「目的を持つ行動」のように外から観察されるのです。
心の始まりはどこにあるのか
私たちは「考えて行動する」と思いがちですが、実際には多くの反応が自動的に起きています。
熱いものに触れれば反射的に手を引っ込めるのと同じように、単細胞もDNAの命令に従って動くだけ。
それでも、外から見れば「意図があるように見える」。
では、心はどこから生まれたのでしょうか。
DNAの仕組みが積み重なり、神経系が発達し、やがて意識が芽生えたとすれば、私たちの感情や意思もDNAの延長線上にあると言えるのかもしれません。
今日の気づき
単細胞の動きは単なる反応にすぎない。
けれどその姿は、心の原点を映す小さな鏡のようだった。
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