「耳が聞こえなくなる」と人に言えない、ファイトソング花枝ちゃん
ドラマ「ファイトソング」では、主人公の花枝ちゃんがお医者さんから
腫瘍が見つかった
手術で取り除く必要があるが
その際に耳が聞こえなくなってしまう
可能性が高い
と宣告されていました。
でもこのことは、周囲の誰にもまだ話してはいません。
どうして?
–more–
花枝ちゃんがお医者さんに
一人で手術を受けたい
と頼んだ時、お医者さんは
周りの人達の支えは 絶対に必要
として、身近の誰かに相談しておくように言われちゃってました。
でも何となく分かりますよね、周りの人に言いたくないっていう気持ちは。
これを読んでいるあなたも、最後の最後まで誰にも言わずに一人で乗り越えたいと思うかもしれませんね。
それにしても、花枝ちゃんが「耳が聞こえなくなるかもしれない」っていう事実を誰にも言いたくなかった理由は何だったんでしょうね。
お医者さんには、次回来るときは相談した人と一緒に診察に来るように、とお願いされてしまっています。
花枝ちゃん
まいったな…
って、困り果ててました。
花枝ちゃんが施設長の直美さんにも、先輩の慎吾くんにも、そして恋への取り組み中の春樹くんにも話してはいなかったのですが、
もし自身の耳の腫瘍のことを言えなかった理由を誰かに話すとしたら
その人に迷惑をかけたくないから
っていう理由が最初に浮かぶかと思います。
でもこの、「迷惑をかけたくない」っていったい何なんでしょうね。
学校なんかで子供がいじめにあっていて、耐えきれず自殺してしまった、なんていう事件がときどきニュースなんかで報道されたりするのを見ることがあります。
こんな時、その多くはその子は
自分はいじめられていて
もう死にたい
なんていうことは親には言わない場合が多いですよね。
親の方は、子供が亡くなった後で初めて、「子供がそんな気持ちでいたんだ」ということを知る場合も多いように思います。
親としては
どうして早く言ってくれなかったの
という思いでいっぱいでしょうが、子供にとって、実は言えないんですよね。
子供が親に言わない、それはおそらく
親に心配をかけたくない
っていうのがその理由として挙がるんだろうと思います。
でも反対に、親が子供に対しても「子供に心配をかけたくない」っていうこともありそうです。
子供の学費をどうやって工面したのか、を子供には話したくない、などの場合ですよね。
これだけではありません。
言ってくれれば
助けてあげたのに
っていう話は、私はいままでに何度も聞きました。
「助けて」って言えなかったことから起きる悲劇ですね。
でもこれは単に、「心配をかけたくない」とか「迷惑をかけたくない」なんていうことよりもはるかに大きな
「心理的圧力」
がかかっている結果なんじゃないでしょうか。
心理的圧力の正体
きっとこの圧力は、何か一言で説明できるようなものではなく、
たくさんの理由が交じり合ってどうにもならなくなった結果のように思えます。
その理由の一つとして、たとえば
恥
の感覚ですね。
たとえば子供にとって、いじめられること、イコール負けること、つまり
恥ずかしいこと
と考えているかもしれません。
同じことは、ファイトソングの花枝ちゃんにも言えるのかもしれません。
花枝ちゃんは強い少女です。弱音を吐きません。
少なくともそう見せています。
そんな花枝ちゃんにとって、自身の耳の腫瘍のことで誰かに頼ろうとすることは
弱音を吐くこと
つまり、恥ずかしいこと
という感覚もあったのかもしれません。
強くて
かっこいい少女でいたい
病気のことを相談するのは
みっともないこと
相談するのは
弱くて恥ずかしいこと
自分一人の力で切り抜けるのは
誇らしくてかっこいいこと
という感覚が花枝ちゃんにはあったのかもしれませんね。
この、
「恥ずかしい姿は見せたくない」
「かっこいい姿だけを見せたい」
っていう思いは誰にでもある強い欲求なので、これが花枝ちゃんの場合の一番の理由かなという気がします。
もっとも、何を恥ずかしいと思うのかは、人によってや年齢などによってさまざまなので、
この「恥ずかしいと思う気持」は人の心を分かりにくくさせてしまってますね。
他には、人の欲求として
人に喜んで欲しい
人の役に立ちたい
っていうものがありますね。
私も経験があります。ネットでどこの誰かも分からない人に何かを教えてあげて、喜んでもらえた時、嬉しいと感じたことがあります。
逆に、私が教えてもらって助かったっていう時、「ありがとう」って言ったことで、教えてくれた人が「良かった」って言った時も、その気持ちがよく分かった気がしました。
その点では、相談することで相手の人が逆に
困ってしまう
悲しんでしまう
かもしれないっていうことは、相談した本人にとっても辛いことですよね。
むしろ、相手に心配をかけないことが自分にとっては、「密かに相手を思いやっている」っていう感覚もあるのかもしれません。
その他にも、相談することで場が暗い雰囲気になることへの責任感だったり、自分一人の力では何もできないのかという無力感だったりもあるかもしれません。
更には
人は誰かから恩を受ければ、いつか恩を返さなきゃいけない、っていう圧力を感じます。
いわゆる
義理
っていう感情ですね。
心理学なんかのテストでも、必要でもないし頼んでもいないものを受け取った時でさえ、何かお礼をしなきゃいけないっていう圧力を人は感じているようでした。
そして、この圧力は人をとても不快にします。
なので、お歳暮その他で何かをもらってしまうと、
本当はありがたいと思ってなくても、急いで「ありがとう」と言ってお返しをして、不快を解消してしまうんですね。
誰かから恩を受けても、恩に見合ったお返しが思いつかない場合なんかは、恩を受けたくないっていう思いもあるんじゃないかと思います。
ファイトソングの花枝ちゃんが、自分の耳の腫瘍のことを周囲の誰にも話さなかった理由として、
この「恩を受けることに抵抗がある」っていう思いも少しはあったのかもしれません。
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