アロマンティックが理解できない、恋せぬふたりより
他者に対して恋愛感情も性的感情も抱かないという、
「アロマンティック・アセクシャル」
の男女が、周囲の無知ゆえに苦しんでいる、という状況がテレビドラマ
「恋せぬふたり」
に描かれていました。
・以下、ネタバレがありますのでご注意ください・
主人公の咲子(さくこ)さんの、お父さんもお母さんも、そして妹夫婦も決して悪気はないのですが、結果的にみんなが苦しんでしまったということがありました。
その象徴は第2話の、咲子さんと高橋さんのふたりが咲子さんの家にカニを食べに行った場面でした。
咲子さんと同居人の高橋さんが、咲子さんの家にカニを食べに行くのですが、
恋人に違いないと思い込んだ咲子さんの家族に高橋さんが質問攻めにあってしまいました。
そして、咲子さんたちふたりに妹夫婦たちが
「普通に幸せになればいい」
「普通の家庭をつくって
幸せになる運命だ」
と言ったところで、咲子さんは考え込んでしまったのでした。
その間30秒、考え込む咲子さんの表情は次第に険しいものに変わっていきました。
この間、何を考えていたんでしょうね?
恋愛感情を持てない自分に
普通の家庭を築くことは無理
ということ?
大切な同居人の高橋さんの
つらい秘密を暴いてしまって
申し訳ないという気持ち?
いろんな思いがグルグルと頭の中を駆け巡って、咲子さんはこの後とうとう感情を爆発させてしまいました。
きっと、咲子さん自身に対することというよりも、高橋さんに辛い思いをさせてしまったということの方が、耐えられなかったのかなという気がします。
ここで咲子さんは自分が「アロマンティック・アセクシャル」であることを家族に話します。
が、
まあ、当然とも思いますが、家族に理解してはもらうことはできませんでした。
正直なところ、このドラマを観ていた私も、何のことか分からないまま観続けていました。
実はこのドラマを何度か観直してみて、
「アロマンティック・アセクシャル」って何?
って思ってネットで検索をしました。
ある程度の知識を得た後でまた同じ第2話を観直してみて、初めてあの場面での咲子さんの苦しみ、悲しみ、怒りが分かってきました。
でも、その後お父さんが言ってくれましたね。
「無理に
無理に恋だの結婚だの しなくていい。
お前が何者でも 俺の娘に変わりない。」
優しいお父さんですね。お父さんだけは理解してくれたのかもしれない。
と期待したのも束の間、やっぱり
「とにかく うちに帰ってこい。」
とのことでした。
やっぱりすぐに理解してもらうのは難しかったようでした。
でもこの優しいお父さん、いまはまだ理解できなくても、いずれは咲子さんの良き理解者になってくれるに違いないという気がします。
もし私があのお父さんの立場だったとしても、初めて聞くアロマンティック・アセクシャルという言葉を前にして、咲子さんにあれ以上の言葉をかけるのはきっと無理だったと思います。
そもそも、咲子さんと高橋さんの二人がカニを食べに行くということに、まだ無理があったように思います。
高橋さんは、いわゆる普通の家族を持ったことがなかったからでしょうか、「カニを食べに行く」ということには、実はそれ以上のことが待っているということに気づかなかったのかもしれませんね。
咲子さんは分かっていたので、
「いや~ でも やめといた方が…。
絶対面倒なことになるし。」
と言ってたのですが。
でも、頭のいいはずの高橋さんがそこを見誤ったのは、その直前にあるんじゃないでしょうか。
高橋さん、咲子さんと話している時に、ちょっと興奮して、
「子離れできずに
子どもを縛りつけるのが 親?
自分の価値観を押しつけるのが 家族?
あほらしい!」
なんていうことを言ってしまったんですね。
高橋さんの本音としては、自分の親か一般論としての親に向かって言ったつもりだったのでしょう。
がっ!
話の流れからして、まるで咲子さんの両親をバカにしたような展開になってしまっていたことに気づき、
「すいません。 取り乱しました。」
と謝ってましたね。
きっとこの暴言のお詫びをしたいという気持ちが、無理をしてしまうことにつながったのでしょう。
家に帰った後、咲子さんがお母さんから言われたことで、
「何も言い返せませんでした。
「家族になる理由がない」って言われて…」
と、高橋さんとの同居に迷いを感じていた時、高橋さんが
「朝 一人だと
手打ちをする気にはなれなくて…
咲子さんがいたら
朝 おいしい手打ちうどんが食べられる。
ですから 僕にもメリットがあります。」
と言ってくれていましたね。
私はこの言葉に言いようのない「優しさ」を感じてしまいました。いかにも男の優しさですね。
(もちろん最初に観た時は全く分かりませんでしたけど。)
きっと、こんな優しい高橋さんとなら、咲子さんは恋愛での家族以上にいい家族になれそうな気がしました。
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